EU市民保護メカニズム

2025年 10月 25日

欧州連合の災害対応協力体制

毎月業界のトピックをご紹介しておりますが、 10月は欧州域内外で大規模災害が発生した際の欧州連合 (EU) の協力体制に焦点を当ててご案内申し上げます。

■ EU市民保護メカニズム (European Union Civil Protection Mechanism、EUCPM)

1992年、欧州連合 (EU) は、世界中で困窮している人々に対する援助を目的として欧州委員会人道援助・市民保護総局を創設しました。EU市民保護メカニズム (EUCPM) とは、同局の管轄の下運用される、EU域内外の災害対応を目的として設立された制度です。 EUCPMは、緊急支援の迅速な展開・重複防止を担う緊急対応調整センターを有しております。火災、パンデミック、地震などの災害に自国で対応することが困難な国は、同センターを通じてEUCPMの支援を要請することができます。この際、同センターはEU内各国間の調整役としての役割を果たします。また、EUCPMは災害救助を費用面で援助する他、自らの戦略的災害備蓄からの追加支援も行います。この戦略的災害備蓄には、EU参加各国が供出する各国保有の人員や装備により構成される欧州市民保護プールの他、後述するEUが直接所有する緊急物資の備蓄システムなどがあります。

■ EUにおける消防航空機の需要 – rescEUの創設

気候変動により自然災害の発生頻度が増す中、大規模災害対策としてEU直接保有型の備蓄システムであるrescEUが2019年に創設されました。EUと参加国が出資するこの備蓄システムには、緊急シェルターや輸送手段、発電機、医薬品、消防用航空機などの防災資材が含まれます。2024年現在、rescEU管理下には24機の固定翼機と4機のヘリコプターがあり、2027年末までにさらに12機の航空機が追加される見通しです。

■ ITCとEUCPMの関わり

欧州の弊社リース先運航会社は、様々な自然災害への対応に当たるEUCPMを支援しrescEUと協力しています。同社は今年、フランス政府とギリシャ政府の要請を受け、ブルガリア、ギリシャ、ポルトガルに機体を派遣し消火活動を支援しました。ITCは災害対応にて活躍する同社のような社会的使命を果たす事業に注力しており、今後も世界に貢献する航空機リースの組成を推進してまいります。

PDF版はこちら