10,000kmに渡る送電網建設や整備を担う航空機
毎月業界のトピックをご紹介しておりますが、7月はオーストラリアの送電網とヘリコプターの役割についてご紹介致します。
■ 10,000kmに渡る送電網の建設・整備需要
豪州最大の電力供給網と卸売市場である「National Electricity Market」 (以下「NEM」) ※1を管理・運営するオーストラリアの電力・ガス市場管理機関であるAustralian Energy Market Operator (以下、AEMO) は、温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロ (排出量と吸収量を均衡させること) にするための計画を2024年の再生可能エネルギーの統合に関する計画「Integrated System Plan」 (以下、「ISP」) にて発表しました。NEMは、東部・東南部の5州と首都特別地域 (豪州の中でも人口密度が高く、産業が集中する地域) を網羅する供給網で、その供給量は、国内電力消費量の80%を占めます。ISPで掲げる目標を実行するためには、再生可能エネルギー電源や蓄電池の開発投資に加え、2034年までに5,000km 、2050年までに計10,000kmの送電網を新設する必要があります。
■ 送電網の建設・整備におけるヘリコプターの役割
送電線、送電鉄塔の建設や設備更新、保守・整備作業等を迅速に実現するためには、ヘリコプターの活用が不可欠です。例えば、鉄塔間に電線を張る架線 (がせん) 工事では、ヘリコプターを利用して最初に細いナイロンロープを張り、徐々に太いワイヤーロープに引き替えていく作業が行われます。鉄塔工事用物資の輸送、鉄塔設置や撤去、送電線の洗浄でもヘリコプターが多用されています。ISPの発表は、豪州における、電力業界からのヘリコプター需要が長期に亘り続くことを意味します。豪州の運航会社は通常5~7年間に亘る長期契約を電力会社と締結しており、この間に築かれた実績と信頼が参入障壁となり、同じ運航会社との間で契約が更新され続ける傾向があります。このため、運航会社にとっては、長期安定した事業運営が可能となり、リース会社にとっても、長期の機材リース先として安心感があります。
※1:電力システムは西部・南西部と東部・東南部の2つあり、National Electricity Market (NEM) は、東部・東南部のクイーンズランド州、南オーストラリア州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、タスマニア州の5州と首都特別地域を指します。
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